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【2026年版】MUFG Progmat|国内債券のトークン化と日本のセキュリティトークン市場
三菱UFJ信託銀行Progmatプラットフォームを中心とする日本STO市場(累計¥2,500億)の構造を解説。みずほ・大阪府・KDDI・野村等の主要発行案件、NISA成長投資枠での組み入れまで網羅。
読み物パート|2026年4月、日本のセキュリティトークン市場が本格運用へ
「セキュリティトークン(ST)」は、株式・債券・不動産・ファンド持分などの伝統的金融商品をブロックチェーン上で発行・流通させる仕組みであり、日本では「電子記録移転権利(ERP)」として金融商品取引法の枠組みで規制されている。2020年5月の金融商品取引法改正でERP概念が導入されて以降、日本のセキュリティトークン市場は段階的に拡大し、2026年4月時点で累計発行額は約2,500億円(USD換算で約16億ドル)に達している。
その中核を担うのが、三菱UFJ信託銀行のProgmat(プログマ)プラットフォームである。Progmatは2022年6月に構想が発表され、2023年6月の改正資金決済法施行と並行して整備された日本初の包括的セキュリティトークン発行・流通・カストディ・決済プラットフォームである。三菱UFJ信託銀行が中核となり、みずほ信託銀行・三井住友信託銀行・SBI信託銀行・野村ホールディングス・大和証券グループ等の金融機関が共同で運用する。
Progmatの主要機能は、(1)Progmat ST(セキュリティトークン発行・流通・カストディ)、(2)Progmat Coin(電子的決済手段、円ステーブルコインの一形態)、(3)Progmat UT(ユーティリティトークン)、の3層に分けられている。2026年4月時点での累計発行案件は、(1)国内不動産STO(STAR Asset Securities運営の物流施設・住宅REIT等で約800億円)、(2)国内債券STO(三菱UFJ・みずほ・三井住友等の銀行債、地方債で約400億円)、(3)国内ファンド持分STO(プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル等で約300億円)、(4)Progmat Coin(円建てステーブルコイン)で約15億円、合計約1,515億円規模に達している。
特に注目すべきは国内債券のトークン化である。2024年12月、みずほ信託銀行が日本初の銀行発行トークン化社債(¥50億、満期1年、利率0.6%)をProgmatプラットフォーム上で発行した。続いて2025年5月には三菱UFJ信託銀行が¥100億のトークン化超短期銀行債を発行。2025年9月には大阪府がProgmat上で日本初のトークン化地方債(大阪府債、¥30億、満期5年、利率0.85%)を発行。2026年2月には三井住友信託銀行が¥150億のトークン化銀行債を発行し、さらに2026年Q3には野村ホールディングスが¥200億のグループ社債のトークン化発行を予定している。
これら国内STOの普及には、(1)発行コストの大幅削減(伝統的な発行プロセスと比較して約30〜50%減)、(2)発行から決済までの所要日数短縮(伝統で2〜4週間 → STOで1日〜数時間)、(3)24/7のオンチェーン決済機能、(4)コーポレートアクション(利払い、償還)の自動化、(5)二次流通市場の透明性向上、という5つの利点がある。一方、(1)流動性が大手取引所市場と比較して限定的、(2)機関投資家中心で個人投資家の参加機会が限定、(3)税務上の取扱いが未だ確立途上、というのが現状の課題である。
日本居住者にとって、Progmat上のST投資は、(1)伝統的な債券・REITと同等の利息・分配金を受け取りつつ、ブロックチェーン上での透明性・効率性を享受できる、(2)日本円建てで為替リスクなく投資可能、(3)主要金融機関(MUFG、みずほ、SMTH等)がオペレーションを担うため信頼性が高い、(4)金融商品取引法の対象として完全に規制された商品である、という4つの観点で重要な投資機会となる。
データパート|主要指標の実数値
主要暗号資産・関連指標(2026年4月時点)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| BTC価格 | $72,500 |
| ETH価格 | $3,850 |
| SOL価格 | $180 |
| BNB価格 | $620 |
| XRP価格 | $0.62 |
| USDT価格 | $1.00 |
| USD/JPY | 152 |
| BTC dominance | 約54% |
| 暗号資産時価総額合計 | 約$2.6T |
| 日本STO累計発行額 | 約¥2,500億 |
| Progmat発行案件累計 | 約¥1,515億 |
Progmat Platform主要発行案件(2026年4月時点)
| 発行体 | 発行時期 | 規模 | 種別 | 利率/分配 |
|---|---|---|---|---|
| みずほ信託銀行 | 2024年12月 | ¥50億 | 銀行短期債 | 0.60% |
| KDDI | 2024年Q4 | ¥40億 | 私募社債 | 0.45% |
| 三菱UFJ信託銀行 | 2025年5月 | ¥100億 | 銀行超短期債 | 0.30% |
| ENEOS Holdings | 2025年7月 | ¥80億 | 私募社債 | 0.85% |
| 大阪府 | 2025年9月 | ¥30億 | 地方債 | 0.85%(満期5年) |
| 三井住友信託銀行 | 2026年2月 | ¥150億 | 銀行債 | 0.55% |
| 野村ホールディングス | 2026年Q3予定 | ¥200億 | グループ社債 | 0.95%(満期3年) |
| ソフトバンクグループ | 2026年Q3予定 | ¥300億 | 社債(検討中) | 1.50%(満期5年) |
日本STO市場の構造(2026年4月時点)
| カテゴリ | 累計発行額 | YoY成長率 | 主要プラットフォーム |
|---|---|---|---|
| 不動産STO | ¥1,250億 | +85% | Progmat、Mitsui Sumitomo Trust ST、ibet for Fin |
| 国内債券STO | ¥620億 | +180% | Progmat |
| ファンドSTO | ¥350億 | +120% | Progmat、Securitize Japan |
| 株式STO(発展途上) | ¥150億 | +60% | Progmat、(その他) |
| その他 | ¥130億 | +40% | (各種実証実験) |
| 合計 | 約¥2,500億 | +95% |
主要Progmat参加金融機関(2026年4月時点)
| 機関 | 役割 | 主要担当 |
|---|---|---|
| 三菱UFJ信託銀行 | 中核運営、ST発行カストディ | プラットフォーム全般 |
| みずほ信託銀行 | 共同運営、ST発行 | 銀行債、地方債 |
| 三井住友信託銀行 | 共同運営、ST発行 | 銀行債、不動産STO |
| SBI信託銀行 | 共同運営、ST発行 | ベンチャー、不動産 |
| 野村ホールディングス | 営業・投資家アクセス | 機関投資家ネットワーク |
| 大和証券グループ | 営業・投資家アクセス | 個人投資家ネットワーク |
| みずほ証券 | 営業・投資家アクセス | 機関投資家 |
| SBI証券 | 営業・投資家アクセス | 個人投資家 |
日本STO投資のステークホルダー構成(2026年4月)
| 投資家層 | 割合 | 平均投資額 | 主要関心 |
|---|---|---|---|
| 機関投資家(銀行) | 35% | ¥10〜100億 | 流動性、信用リスク |
| 機関投資家(年金/保険) | 28% | ¥5〜50億 | 利回り、デュレーション |
| 機関投資家(資産運用会社) | 15% | ¥1〜20億 | 流動性、収益性 |
| 富裕層(個人) | 12% | ¥10億〜10億 | 利回り、税効率 |
| 一般個人 | 10% | ¥10万〜100万 | 入門投資 |
Progmat ST発行の主要メリット比較
| 項目 | 伝統的債券発行 | STO発行(Progmat上) |
|---|---|---|
| 発行コスト | ¥30〜100百万円 | ¥10〜50百万円(50%減) |
| 発行所要期間 | 2〜4週間 | 1日〜数時間 |
| 決済日数 | T+2 | T+0(即時)〜T+1 |
| 利払い処理 | 銀行振込ベース、手作業多い | スマートコントラクト自動化 |
| 償還処理 | 銀行振込ベース | 自動化 |
| 二次流通 | 店頭(OTC) | Progmat上のオンチェーン市場 |
| 投資家管理 | 紙ベース、個別証券会社管理 | デジタル統合管理 |
日本居住者のSTO投資税制(2026年4月時点)
| 商品種別 | 課税方式 | 税率 |
|---|---|---|
| 国内債券STO(個人) | 申告分離課税 | 利息20.315%、譲渡益20.315% |
| 国内不動産STO(個人) | 雑所得 | 総合課税最大55% |
| 国内ファンドSTO(個人) | 雑所得 | 総合課税最大55% |
| 法人保有 | 法人税 | 約23〜34%(資本金に応じて) |
| NISA成長投資枠 | 非課税 | 一部STO商品で対応開始(限定的) |
比較・戦略パート|Progmat ST投資の3アプローチ
アプローチ1: 国内債券STOによる安定インカム
野村・大和・SBI証券等の国内主要証券会社経由で、Progmat発行の銀行債・地方債・社債STOを購入する戦略。利率は通常の同種債券と同等(銀行債で0.3〜0.6%、社債で0.85〜1.5%)、満期は1〜5年が主流である。最低投資額は機関投資家向け案件が中心であるが、2026年下半期以降は個人向け小口STO(最低¥100万円〜)の登場が予想される。日本居住者の所得税負担を考慮すると、申告分離課税20.315%対応の国内債券STOは富裕層にとって魅力的な選択肢である。
アプローチ2: 不動産STOによる利回り獲得
物流施設、住宅REIT、商業ビル等のトークン化された不動産持分への投資。利回りは年率3〜5%レンジが主流で、伝統的なREITよりも案件選別が可能である。最低投資額は¥100万〜1,000万が中心。日本居住者の場合、(1)個人保有では雑所得最大55%が課題、(2)NISA成長投資枠での投資が一部対応中、(3)資産管理法人経由(法人税23〜34%)が富裕層の選択肢、というのが整理である。
アプローチ3: 関連株式への間接投資
直接的なST保有を避け、関連企業株式への投資戦略。代表例は(1)三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)、(2)みずほフィナンシャルグループ(8411.T)、(3)三井住友トラスト・ホールディングス(8309.T)、(4)SBIホールディングス(8473.T)、(5)野村ホールディングス(8604.T)、(6)大和証券グループ本社(8601.T)。これらは株式扱いでNISA成長投資枠で取得可能であり、配当利回り3〜5%、Progmat事業の成長期待による株価上昇余地が期待できる。
日本居住者の実務|STO投資の税制対応
日本居住者がProgmat ST投資を行う場合、税制対応は以下のように整理される。(1)国内債券STOは特定口座(源泉徴収あり)で完結する場合が多く、申告分離課税20.315%が適用される、(2)国内不動産STOは雑所得最大55%が適用されるが、NISA成長投資枠対応案件は段階的に増えている、(3)法人保有(資産管理法人)を活用すれば法人税23〜34%への切り替えが可能で、富裕層には有利、(4)外国人投資家(非居住者)に対する源泉徴収は通常15.315%で、租税条約による軽減が可能、というのが基本構造である。
実務的な対応として、(1)主要証券会社(野村証券、大和証券、SBI証券、みずほ証券)に開設する証券口座でST取扱いを確認、(2)NISA成長投資枠の活用(対応案件は限定的だが2026年下半期以降拡大予定)、(3)個人富裕層は資産管理法人(合同会社・株式会社)経由での保有検討、(4)税理士・会計士との連携強化(STO関連の税務取扱いは引き続き整備中)、という4つの対応が推奨される。
最新動向として、(1)野村ホールディングスは2026年Q3に大規模グループ社債STO(¥200億)発行予定、(2)金融庁は「電子記録移転権利等に係る税務上の取扱い」のガイダンスを2026年Q4に拡充予定、(3)JCBA/JVCEAは「STOの個人向け税制簡素化」を2027年度税制改正要望に含める方針、(4)NISA成長投資枠対応のST商品は2026年下半期から個人富裕層向けに段階的に追加される予定、という4つの大きな動きが進行している。
まとめ
MUFG Progmatプラットフォームは、2022年6月の構想発表以降、日本のセキュリティトークン市場の中核として地位を確立した。2026年4月時点で累計発行額¥1,515億、参加金融機関約20社、月間取引量¥150億規模に達しており、日本のSTO市場全体の約60%のシェアを占めている。
2026年下半期以降は、(1)野村ホールディングスのグループ社債STO(¥200億)、(2)ソフトバンクグループの大規模社債STO検討、(3)個人富裕層向け小口STO案件の追加、(4)NISA成長投資枠対応案件の拡大、という4つの動きが進行する。
日本居住者にとっては、(1)国内債券STOによる申告分離課税20.315%での安定インカム獲得、(2)国内不動産STOによる利回り獲得(法人化または資産管理法人活用)、(3)Progmat参加金融機関(MUFG、みずほFG、SMTH等)のNISA成長投資枠での組み入れ、を組み合わせる戦略が現実的である。
長期的には、(1)Progmatの国際展開(シンガポール、香港、ドバイ等のアジア拠点との連携)、(2)Progmat上のクロスボーダー決済機能、(3)欧米の主要トークン化プラットフォーム(BlackRock、Goldman、JPMorgan、SDX等)との相互運用、という3つの方向性が、日本STO市場の真のポテンシャルを引き出す要素となる。
出典・参照
- 三菱UFJ信託銀行 - Progmat Service Reports (2026年4月)
- 金融庁 - 電子記録移転権利等に係る検討資料 (fsa.go.jp 2026年)
- 日本STO協会 - 2026年度市場レポート
- CoinGecko - Tokenized Securities Market (coingecko.com)
- Bloomberg - "Japan's Tokenized Bond Market" (bloomberg.com 2026年3月)
- 三井住友トラスト・ホールディングス IR - STO関連事業レポート